ドイツのカメラメーカー: 戦前からの変遷

ドイツ系

ドイツのカメラメーカーは、20世紀を通じて世界的に影響力のある存在でした。第二次世界大戦以前、多くの革新的なカメラがドイツの各メーカーから発表され、世界中の写真愛好家や専門家に愛用されました。以下にその代表的なメーカーとその機種を紹介します。

1. Leica(ライカ)エルンスト・ライツ

  • 場所: ヴェッツラー
  • 特徴: ライカは、35mmフィルムを使用する小型カメラのパイオニアとして知られています。Oskar Barnackによって設計されたカメラは高品質のレンズと精密なメカニズムで画期的でした。Leica Ⅲaは完成度も高く今も完動品が多く現存しています。
  • 代表機種: Leica I(1925年)、Leica II(1932年)Leica Ⅲa(1935年)

2. Zeiss Ikon

イカ、エルネマン、ゲルツ、コンテッサ・ネッテルの4社がカール・ツァイス財団の主導で合併

  • 場所: ドレスデン
  • 特徴: Carl Zeiss Stiftungの一部として設立されたZeiss Ikonは、革新的な技術と優れた工業デザインを融合させたカメラを数多く生産しました。特にレンジファインダーや一眼レフカメラの開発で知られています。
  • 代表機種: Contax I(1932年)

3. Voigtländer

  • 場所: ブラウンシュヴァイク
  • 特徴: 18世紀にウィーンで創業した光学機器メーカーで後にブラウンシュヴァイクに移転。特にレンズの光学設計において高い評価を受けていました。戦前は主に折りたたみカメラや二眼レフカメラが人気でした。
  • 代表機種: Bessa(1929年)

4. Rollei(ローライ)Franke & Heidecke

  • 場所: ブラウンシュヴァイク
  • 特徴: Rolleiは特に二眼レフカメラの「Rolleiflex」シリーズで知られています。これらのカメラは高い画質と堅牢な構造でプロの写真家に広く愛用されました。
  • 代表機種: Rolleiflex(1929年)

5. Jhagee

  • 場所: ドレスデン
  • 特徴: Jhageeは、特に「Exakta」シリーズで知られるカメラメーカーです。これは35mmフィルムを使用する一眼レフカメラの草分けの一つで、多くの革新的な機能を備えていました。
  • 代表機種: Kine Exakta(1936年)

6. Agfa

  • 場所: ミュンヘン
  • 特徴: Agfaは元々は化学品製造を手掛ける企業でしたが、後に写真フィルムやカメラ製造にも手を広げました。
  • 代表機種: Agfa Billy Record(1933年): 折りたたみカメラで、シンプルながらも優れた性能を提供し、広く一般消費者に受け入れられました。

7. Kamera werkstätten Guthe & Thorsch

  • 場所: ドレスデン、
  • 特徴: 1920年創業。35mm一眼レフの先駆者。
  • 代表機種: Pilot Super、Plaktiflex(1939年)

第二次世界大戦後のドイツ分裂はカメラ産業にも大きな影響を与えました。概ね本拠地所在によって東西に分割されLeica、Voigtländer、Rollei、Agfaは西、Jhagee、Kamera werkstätten Guthe & Thorschは東となりました。

Zeiss Ikonは西ドイツはシュトゥットガルト、東はドレスデンで各々営業したため、商標権の侵害訴訟に発展し、その結果東ドイツ側のZeiss Ikonは西側に輸出する場合は別のブランドを使用することになり、CONTAX Sとして発売されたペンタプリズムを初めて搭載した35mm一眼レフのシリーズは後にPentaonブランドで西側諸国に輸出されました。

Leicaは1950年にIIIfを発売、その後1954年にM3を発売、その後も世界に冠たる高級機として業界をリードしました。

Voigtländer では名玉Color Scoper装着の「Vito」シリーズが人気でした。

Rolleiは1967年に超コンパクト35mmカメラの傑作Rollei35を生み出しました。

Jhagee は戦前発売の35mmフィルムを使用する世界初の一眼レフ「Kine Exakta」を発展させ普及版Exaを含むエクサクタシリーズを展開しました。Kamera werkstättenはPlaktiflexを発展させてPlakticaシリーズを開発。採用されたM42マウントは日本の旭光学など多くのメーカーが採用し実質的な世界標準となりました。

隆盛を極めたドイツのカメラメーカーですが、時間の経過とともに各メーカーとも日本メーカーとの激しい競争や国策によって統廃合されていきました。冷戦終結後のドイツ再統一は、これらの企業に新たな機会をもたらしましたが、同時にグローバルな市場での競争圧力も高まりました。経済的な困難や技術の進展により、多くの伝統的なカメラメーカーは事業を縮小させたり、デジタルカメラ市場への移行を図ったりしながらも、その過程で企業のアイデンティティや方向性が試されることとなりました。

現代においても、Leicaのように高級カメラ市場で名声を保つ企業もあれば、消滅してしまった企業や歴史的なブランドが新たな形で生まれ変わっている例もあります。

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