KW(Kamera-Werkstätten Guthe & Thorsch、略称KW)は、1939年にドイツ・ドレスデンで設立され、一眼レフカメラの歴史に大きな足跡を残したメーカーです。特に「Praktica」シリーズは、戦後の東ドイツのカメラ産業において重要な役割を果たしました。その中でも、Praktica FX2はKWの戦後の代表的なモデルのひとつです。
Praktica FX2は、1950年代に登場した35mmフィルム一眼レフカメラで、シンプルながら堅牢な設計で、多くの写真家に支持されました。ペンタプリズムが内蔵されておらず、標準の状態ではウェストレベルファインダーで撮影します。カメラを腰の位置で構えて、上から覗き込むスタイルで、静物や建築物の撮影に適しています。
また、レンズ側のピンがカメラのシャッターボタンと連動しており、シャッターを押すことでレンズの自動絞りが作動する仕組みも、当時の一眼レフカメラとしては先進的でした。これにより、撮影者が構図を決めた後に絞りを変更する手間が省けるため、操作性が向上しています。
この実機には、Carl Zeiss JenaのTessar 50mm f/2.8レンズが装着されています。Tessarは、そのシャープさと高コントラストな描写が特徴で、多くのプロやアマチュア写真家に愛されてきたレンズです。4枚構成のシンプルな設計ながら、非常に高い解像力を持ち、開放絞りでもクリアな画像を得られることで知られています。特にポートレートや風景撮影において、その優れた描写性能を発揮します。
Praktica FX2では、M42スクリューマウントが採用されています。M42マウントは、Prakticaマウントとも呼ばれ、その汎用性から多くのメーカーに採用されました。後にPentaxもこのマウントを採用し、1960年代から1970年代にかけて、M42は一時期世界共通のレンズマウント標準として広く使用されました。この互換性により、多くの写真家が異なるメーカーのレンズを自由に使用することが可能になり、M42は世界中で普及しました。
また、クイックリターンミラーはPraktica FX2には搭載されていません。東ドイツ製のExactaやPentaconも、初期モデルではこの機能を備えておらず、この機能が一眼レフカメラの標準となるのは、1950年代後半から1960年代にかけてのことです。この点では、1954年に世界初のクイックリターンミラーを搭載した日本の「アサヒフレックスIIB」と比較すると、技術的な違いが明確になります。
KWのPraktica FX2は、35mm一眼レフカメラとして、戦後の東ドイツのカメラ産業において重要な役割を果たしました。M42マウントの採用や自動絞り機構といった機能は、その時代の技術的な革新を反映しており、写真撮影の効率を高めるものでした。市場では多くの競合モデルが存在しましたが、Praktica FX2はそのシンプルさと使いやすさと手頃な実勢価格で今なおコレクターや写真愛好家に愛される存在です。
Tessarレンズらしい切れ味のある写りでした。逆光や開放絞りでもなんとか堪えています。
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