はじめに
1975年に発売されたCanon 110EDは、110フィルム対応カメラの中でも特に高級志向のモデルとして知られています。当時、110フィルムカメラはコンパクトで手軽に撮影できることを特徴としていましたが、多くの機種は簡易的な仕様でした。そんな中、Canonは「高級機」としての位置付けでこのカメラを投入し、F2の明るいレンズ、二重像合致式の距離計、絞り優先AE、日付写し込み機構などを搭載しました。その結果、高価格ながらも人気を博したモデルとなりました。
110EDの特徴
Canon 110EDの主な特徴は、以下のように当時の110カメラとしては贅沢な仕様を備えていた点にあります。
明るいF2のレンズ
初期の110カメラは固定絞りのものもありエントリーモデルではF11固定というものもありました。中級機でF6.4、高級機でもF2.8というものが多かったのですが、本機にはF2の大口径レンズ(4群5枚構成 26mm F2)が搭載されており、暗所でもしっかり撮影できました。

二重像合致の距離計
ファインダー内にはレンジファインダー式の二重像合致方式の距離計が搭載され、正確なピント合わせが可能でした。これにより、被写界深度に頼らずに狙ったピントで撮影できる点が魅力です。

絞り優先AE
シャッタースピードは8秒〜1/500秒の範囲で自動制御され、ユーザーは天候に合わせてF2, F4, F8, F16の4段階で絞りを調整することができました。この機能により、表現の幅が広がりました。
日付写し込み機構
極小の日付写し込み機構を搭載しており、当時のカメラとしては先進的な機能でした。現代ではデジタルカメラやスマホで簡単に日付を記録できますが、このサイズのフィルムに写し込むことができるようにした事は驚きです。ちなみに”年”で選択できるのは0〜9と76〜86のみです。10年以上使用されることは想定しなかったのかもしれません。約50年のときを経て”令和”になり後3年弱セット可能です。
110フィルムとISO感度
Canon 110EDは、発売当初ISO100専用の仕様でした。これは、当時110フィルムが基本的にISO100しか存在しなかったためです。しかし、後にISO400のフィルムが登場すると、それに対応するためにカートリッジの切り欠きを利用してISOを自動判別するCanon 110ED20が発売されました。
現在利用可能なLomography製110フィルムはISO200とISO400ですが、Canon 110EDはISO100のみの対応のため、ISO200のフィルムを装填し、フィルムのラチチュード(露出寛容度)に期待するのがベストと考えられます。

また、Pentax Auto 110のようにカートリッジを加工してISO感度をカメラに伝える必要がある機種もありますが、Canon 110EDにはその必要がありません。
撮影スタイルと使い心地
このカメラは、他の110カメラとは異なる独特な操作感を持っています。特に、巻き上げがスライドレバーを押し込む方式であることが特徴で、使い始めは戸惑うかもしれませんが、慣れるとスムーズな操作が可能です。
撮影時のスタイルもユニークで、スリムな本体を双眼鏡を覗くように構えることで、110カメラならではの「未来的な」使用感を味わえます。発売当時、このスタイルは従来のカメラとは異なり、新時代を感じさせるものでした。

まとめ
Canon 110EDは、110フィルム時代に登場した高級ポケットカメラの代表機であり、現在でもクラシックカメラファンの間で高い人気を誇ります。110フィルムは入手困難になりつつありますが、Lomographyが生産を続けているため、今でも撮影を楽しむことが可能です。コンパクトながらも機能性が高く、110フィルムならではの独特な写りを楽しめるこのカメラは、今なお魅力的な一台と言えるでしょう。
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