1. 序論
1970年代、世界的にコンパクトカメラの需要が高まる中、ローライは110フィルムを採用した高級ポケットカメラ Rollei A110 を市場に投入した。他社の110カメラがプラスチック主体の簡易カメラだったのに対し、A110は金属製ボディ、高精度な機械構造、そして カール・ツァイス社の認可のもとでローライが製造したTessar 23mm f/2.8 レンズを搭載し、「最小の高性能カメラ」として際立っていた。本機の登場により、110フィルムという小型フォーマットでありながら、35mmフィルム並みの描写を目指す試みが本格化した。
2. 特徴とメカニズム
(1) 110フィルムの利便性と限界

110フィルムは1972年にコダックが発表した規格で、カートリッジ式の利便性が特徴であった。しかし、フィルム面積が小さいため画質面では35mmフィルムに劣り、特に粒状性や解像度の低下が避けられなかった。A110はこの課題に対し、高精度なレンズと精密な露出制御で挑んだ。
(2) ローライならではの高級仕上げ

Rollei A110 は、110カメラとしては異例とも言える堅牢な金属製ボディを採用し、精密な機械構造を持つ。一般的な110カメラがプラスチック製で大量生産向けの設計だったのに対し、A110は小型精密機器のような質感と作り込みが特徴である。
(3) ローライ製 Tessar 23mm f/2.8 レンズ
Rollei A110の Tessar 23mm f/2.8 レンズは、カール・ツァイス社の認可のもとでローライが製造したもので、開放から高いシャープネスを誇る。一般的な110カメラのレンズはF3.5以上が多い中、F2.8の明るさはローライならではのこだわりを示している。テッサー構造の特性として、シャープネスとコントラストのバランスが優れ、コンパクトながら高い描写性能を持つ。

3. 他機種との比較
(1) Canon 110EDとの比較
- Canon 110ED は、同じく110フィルムを採用しながらも、距離計式、シャッターカバー、ISO感度の調整機構を備えるなど、使い勝手に配慮したモデル。一方で、A110は完全プログラムAEとスライド機構による操作感が特徴的。
- 共通点: 高級志向、明るいレンズ(Canon 110EDは26mm f/2.0)。
- 違い: A110は金属ボディ、完全自動露出、独特のスライド機構。

(2) PENTAX Auto 110との比較
- PENTAX Auto 110 は、世界唯一のレンズ交換式110一眼レフで、110フォーマットの可能性を広げた。A110はコンパクトさを重視し、固定レンズとスライド機構による操作性を追求。
- 共通点: 110フィルム採用、高級機。
- 違い: Auto 110 は一眼レフシステム、A110はレンジファインダースタイルのコンパクト機。

(3) Minox Bとの比較
A110は、110フィルムを使用する高級コンパクトカメラであったが、それよりもさらに小型なカメラとしてMinox B が存在した。Minox B は、8×11mmの超小型フォーマットを採用したスパイカメラとして有名であり、110フィルムよりもさらに小さいフォーマットながら、高精度なレンズと機械式シャッターを搭載していた。
- 共通点: 超小型サイズ、機械式シャッター、高級志向
- 違い: A110は110フィルム、Minox Bは8×11mmフィルムを使用。Minox Bはセレン露出計内蔵。
Minox Bはスパイ映画などでも頻繁に登場し、実際に情報機関でも使用された。Rollei A110はここまでの小型化はされていないが、「ポケットに入る本格カメラ」という思想は共通しており、どちらも小型カメラの名機として知られている。

4. まとめ
Rollei A110は、110フィルムカメラの中でも特に高級志向のモデルとして設計され、カール・ツァイス社の認可のもとでローライが製造したTessar 23mm f/2.8レンズと精密な機械構造を持ち合わせた、極めて完成度の高いカメラだった。しかし、110フィルムの生産終了や現像可能なラボの減少により、現在では撮影環境が非常に限られている。それでも、この名機が動態保存され、なお撮影可能な状態で手元にあることは大きな喜びでありLomoのフィルムによってかつての名機の描写力を再び確かめることができるのは、今の時代においても特別な体験と言えるだろう。
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