重要科学技術史資料というのをご存知でしょうか?国立科学博物館が登録・保護される文化財で愛称は「未来技術遺産」。こちらの呼称だと聞いたことあるという方も多いかもしれません。フィルムカメラで登録されているのははこれまでのところ
- 2014年登録 00132 写ルンです
- 2019年登録 00278 ハンザ・キャノン
- 2019年登録 00279 アサヒフレックスⅠ型
- 2019年登録 00280 ニコンF
- 2020年登録 00288 トプコン REスーパー
- 2020年登録 00289 オリンパス OM-1(発売当初の名称は「M-1」)
- 2020年登録 00290 ミノルタα-7000
- 2021年登録 00310 キャノンAE-1
いずれも同時代の方であればカメラファンでなくても「知っている!」という画期的な商品なのですが、その中にあってもしかするとトプコン REスーパーは少し知名度が低いかもしれませんね。登録理由は「TTL開放測光露出計」を初めて内蔵した一眼レフということになっています。撮影に使うレンズを通過した(Through The Lens)光をレンズを絞り込むことなく視野が明るいままで計測できる露出計を世界で初めて搭載して発売されたカメラ、ということで1963年の発売です。TTL測光自体は1960年にペンタックススポットマチックがプロトタイプとして発表されていましたが、製品化はトプコンより遅くなり1964年で絞り込み測光でした。開放測光を実現するにはレンズの撮影時の絞りの情報をボディーに伝達して露出計の表示を調節する必要があります。絞り込み測光は撮影時と同じ絞りまで絞り込んで測光するので情報伝達による調整は不要です。以前書いた一眼レフ三種の神器「ペンタプリズム」「クイックリターンミラー」「自動絞り」(シャッターを開いている間だけ絞り込む)の次の技術、ということになりますね。せっかく自動絞りでファインダーが明るいまま撮影できるようになったのに測光のために絞り込むのでは若干後退してしまう感じもします。それだけにトプコン REスーパーのTTL開放測光は画期的だったのですね。では翌年発売のペンタックスSPはなぜ絞り込み測光だったのでしょうか?測光精度の議論もあったようですが最大の理由はこの仕組みについてのトプコンの特許が大変強力だったからと言われています。とんがり屋根ではなくフラットトップのペンタプリズム付ファインダーですが、ファインダー交換可能。モータードライブは1963年に同時発売で無調整で装着可能・・・日本のカメラメーカーが鎬を削って一眼レフ開発合戦をしていた1960年台前半の熱を感じる逸品です。
撮影レンズが露出計!
…ミラー自体に露出計の受光体CdSをビルトイン……
国産カメラの中でも最もすぐれたマニアや専門家向けの高級カメラです。
———–↑当時の東京光学の広告より↑———–
TTL開放測光を世界で初めて搭載したTOPCON RE SUPER RE Auto TOPCOR 58mm F1.8、135mm F3.5 2本をレンズ交換しながら秋の葉山を撮影。フィルムカメラは撮影から実際に画像を見るまでに時差ができるので、そもそも写っているかどうか、露出は適正か、ピントは合っているか、背景のボケはどんな感じか、どんな発色か・・・現像後の画像を最初に見るときは成績表を見るときのような気持ちになりますね。特に入手後初めての撮影はドキドキします。このカメラ、レンズでは初めての撮影ですが、問題なく撮影できるようです。初回ということでASA400のフィルムを入れているので、絞り込んだショットが多くボケ(特に135mm)を生かした絵にはなっていませんが、2本とも撮りやすいレンズでした。
ピント合わせにはかなり苦戦したので開放で撮って思った被写体にピントが合うか、あまり自信はありません。今後なるべく長くマニュアルのフィルムカメラを楽しむには自分の目を大切にしないといけないなぁ、と改めて感じました。ズームではない単焦点レンズだとトリミング前提とはいえフレーミングは基本自分が動かなければならないので足腰も大事ですね。
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